<デヴィッド・ガーフィールド>
70年代中盤からフレディ・ハバードやジョージ・ベンソンのバンドで多彩な技を 披露していたキーボード 奏者:デヴィッド・ガーフィールド。彼の名は、カリズマのレコード・デビューが 実現した80年代前半から日本でも大きな注目を集めるようになり、とりわけ、LAフ ュージョンに入れ込むファンにとっては、彼の 活躍ぶり、そしてそのスタイルこそがLAの象徴、という高い評価を得ている。マイ ケル・ランドウ、 ラリー・クライマス、ネイザン・イースト、そして故カルロス・ヴェガ、そういっ た超売れっ子プレイヤー達のまとめ役として、今日まで様々なプロジェクトを成功 させてきたその手腕は、フュージョンという畑 だけでは収まりきらない、まさに、ヴァーサタイルな表情を持っている。とりわけ 、不世出のドラマー: ジェフ・ポーカロへのオマージュとなった1997年のリーダー作「Tribute To JEFF」 は、デヴィッド・ガーフィールドの確かなプロデュース能力、幅広い音楽センス、 豊富な人脈を改めて世にアピールする絶好の 機会であり、このアルバムは本国でもかなりのロング・セラーを記録している。  そんなデヴィッド・ガーフィールドの最新リーダー作となるのがこのアルバム「 I Am The Cat,..Man」。 勘の良い方ならばすでにお解りのように、ガーフィールドというのは、アメリカの 超人気コミックの キャラクターになっている猫の名前でもある。本作のタイトルはそれをもじって付 けられたものだが、 LAの音楽シーンでは、一種のスラングとして、ミュージシャンのことを“The Cat” と呼ぶ習慣がある らしい。すなわち本作はデヴィッド・ガーフィールドが、The Cats=ミュージシャ ン仲間達と繰り広げる ハッピーかつハイ・テンションな音の記録であり、80年代から今日まで彼が辿って きたキャリアを総括する ポートレート的なアルバムでもある。したがって、中には古い録音のものもあるが 、もちろん、全曲未発表曲。しかも、サウンド自体は決して色褪せたりはしない本 物なので、98年に作られた新作と言っても、 差し支えはないであろうポテンシャルを保っている。高度な音の選択の中にも誰も が楽しめる親しみやすい 旋律を多く盛り込んだ、聴き応え十分の作品だ。  ビートルズの名曲<Strawberry Fields Forever>(本作では<Strawberry Fields>のタイトルで収録)と、デレク&ザ・ドミノス不滅の名作<Layla>をそれ ぞれ当たらし観点からカヴァー。また、ボーナス・トラックには、デヴィッド・ガ ーフィールドがスティーヴ・ルカサー(TOTO)他と結成したもう1つの スーパーグループ:ロス・ロボトミーズの未レコード化曲を特別収録。もともとは ドイツのTVショーの テーマ曲として録音したものだが、結局はCDとして売り出されることなく、お蔵 入りしていたナンバー。ルカサーのヴォーカルがロックとAORの中間を行く、絶 妙の味を出している。  その他の曲も簡単に解説を加えておくと<Memories Of Rio>は、ジョージ・ベン ソンと一緒に演ったジャズ・フェスティヴァルでリオに行った時の思い出を曲にし たというリリカルなナンバー。リカルド・ シルヴェイラのギターが本物のブラジリアン・フィーリングを醸し出している。  <Blues For Mr.J>は、ビッグなホーン・セクションにシンセ・ホーンを加えた 、厚い音の壁が魅力。 ちなみにこの“J”とはマイルス・デイヴスの曲<フレディ・フリーローダー>の ようなキャラクターで、ジャズ・クラブにふわっと現れて酒をかっくらって酔っぱ らっている、そんな男のことらしい。  <Deep Within Each Man>はシンガー:フィル・ペリーと1987年に共作したメロ ディアスなバラード。  <Night Of The Frothing Comes>はデヴィッドがS.ルカサーと初めて一緒に書い たインスト曲。  <From Above>は70年代中盤に書いた古いナンバー。1976年に、デヴィッドがフ レディ・ハバードの バンドでプレイしていた時、フレディが<From Behind>というタイトルでレコーデ ィングしている(77年のアルバム「Bundle Of Joy」に収録)。  <Sexual Harassment>は80年代前半に書き始め、90年、グレッグ・ビソネットと ジョン・ペーニャがカリズマに参加してからようやく完成したという難産な1曲。 その頃、アメリカでセクハラ問題が社会的な 注目を集めていた時期だったので、このようなタイトルにしたということだ。  <All We Got To Do Is Try>はもともと、デヴィッドの姉の結婚パーティーのた めに書いたインストだったが、その後、フィル・ペリーが詞を付けてこの形になっ た。デヴィッドのプレイは、今は亡きスタッフの名キーボーディスト:リチャード ・ティーのプレイからインスパイアされたものらしい。